フーヴァー研究所からの誘い

その論文(註:博士論文)が、スタンフォード大学内にある世界的に有名なシンク・タンク、フーバー研究所のラモン・マイヤーズ博士の目に止まった。マイヤーズは毎年素晴らしい学術専門書を続々と出版する怪物。「フーバーに来て、本を書くか」と誘われた。

誘われる前から、ぜひ1度でもよいから行ってみたいと思っていた研究所だ。フーバー研究所で働きながら、日本占領についてさらに調査の枠を広げ、トルーマン大統領図書館(ミズーリ州インディペンデンス)、マッカーサー記念図書館(バージニア州ノーフォーク)で数々の新しい貴重な資料を発掘した。これらの図書館には、日本人研究者が今まで訪れたことがなかったので、歓迎された。トルーマン図書館財団から研究奨励金を受けた。

「日本占領」は、当時(1970年代)「ポピュラーな研究題材」ではなかった。占領について書かれた本も殆どなく、ある本といえば、占領に参加したアメリカ役人及び軍人が、個人的な回顧録として「マッカーサーの日本占領」を美化しながら書いたものだ。

フーバー研究所の、アメリカで著名な教育学者のポール・ハナ博士を紹介され、親しくなった。
 
ハナが「ここフーバーの公文書館にトレイナー文書があるが、誰も使っていないんだ。なぜかなあ」と私に尋ねられた。灯台下暗しとはこのことだ。誰も使っていないのは、誰も知らなかったからだ。

ジョセフ・トレイナーは、日本占領中、マッカーサーの本部(GHQ)で、日本の教育改革に携わった男だ。彼は教育改革に関し、アメリカ側と日本政府側の厖大な量の文書を集めて保管していた。

「トレイナー文書」は「宝庫」だ。

アメリカの占領政策が戦後日本の「姿」を形作った。そのアメリカ製「日本」を永久化しようとしたアメリカは、日本の学校教育および教育哲学に目を付け、大改革をした。それ故、「トレイナー文書」は重大な「発見」だった。



フーヴァー・タワー
(フーヴァー・タワーの地下に公文書館があり、「トレイナー文書」が保管されている)

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(著者撮影)