事前検閲の徹底



GHQの検閲は、日本におけるアメリカ製民主主義の実態を判然と示している。

GHQは、1945年10月4日、日刊紙『朝日』『毎日』『讀賣』『東京』『日本経済』の編集者たちを呼び、翌5日から事前検閲を実施する、と通達した。

といっても、事前検閲は、既に第8軍対敵諜報部の指揮下で行なわれており、この日は、今後、GHQ民間諜報局の民間検閲支隊(Civil Censorship Detachment, CCD)が検閲を担当すると通達しただけだ。

GHQの「事前検閲」とは、新聞や雑誌の編集者が、印刷予定の全ての記事のゲラ刷りを2枚ずつCCDに提出する。アメリカ人スタッフがゲラ刷りを英語に翻訳し(日本側の翻訳を信用していない)、検閲官が削除すべき個所に赤インクで印をつける。

ゲラ1枚は新聞社に返され、残りの1枚は発行された記事と照合するため、検閲官の手元に残される。編集者たちは読者に自然に見えるように、削除された個所は全面的に書き直しさせられた。いかなる場合でも、削除された個所を黒インクで塗ったり、白紙のままとか、あるいは××××のように検閲されたことが分かるようなことは許されなかった。

全面書き直しのあと、最終ゲラ刷りは再び民間検閲支隊に提出された。

「英語やフランス語の外国ニュースに関しては、事前検閲のため原文の提出でよいが、発刊する場合は、日本語への正確な翻訳について、編集者に責任がある」となっている。

GHQの検閲は、小さな出版物にも及び、出版後ただちに2冊を民間検閲支隊に提出し、編集責任者の名前、発刊の日付、電話番号、発行人の住所を明記することを義務づけられた。


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「新聞紙条例」



GHQのマスコミ支配への飽くなき執念は、明治政府が1875(明治8)年に公布した「讒謗律」(名誉毀損に関する刑法)と「新聞紙条例」を思い起こさせる。

「新聞紙条例」には、新聞あるいは雑誌の筆者は(投稿者も同じ)、内外の政治、財政、人情、世相、学術、宗教および官民の権利に関する問題など全ての記事について姓名、住所を明記しなければならない、といったGHQと同じような内容の条項がある。

『社会タイムズ』によると、GHQの検閲に引っかかる記事は、

⑴ 米軍兵士の犯罪を扱った記事

⑵ 米軍兵士の私生活について、好ましくない印象を持たせる記事

⑶ 占領軍の行為について、日本人の不満や憎しみを掻き立てるような記事

⑷ 占領軍の失敗によって、日本人に損害を与えたことを報じた記事

⑸ 食糧不足の深刻さに触れた記事

⑹ 公式声明の出る前に、連合国の政策を報じた記事

⑺ 連合国軍内部の内輪もめを暴露した記事(占領の初期には、ソ連を非難した記事は検閲で削除されたが、1946年後半からは出版を許された)

⑻ 連合国の政策を批判した記事

⑼ 日本の内政問題にGHQが干渉していることを書いた記事

⑽ 戦争犯罪人を擁護している印象を与える記事

⑾ 憲法草案は連合国の強制による産物であることを仄めかした記事

『朝日新聞』は、次の事項を加えている。

⑿ 中国の内戦に米ソが関与していることを報じた記事

⒀ 戦争犯罪人の指名に影響を与える記事

⒁ 公式声明の出る前に、戦争犯罪人の逮捕を報じた記事

⒂ 日本帝国の過去の戦争を正当化しようとした記事