日本政府の危惧


新憲法は、注目に値する二点の特徴をもっていた。

第一は、日本史上、例のなかった人権・市民権の保障である。

GHQ民政局は、国民の人権をめぐって日本政府が示した態度につき、次のように批判した。

「国民に保障された基本的人権が躓きとなっている。日本政府は、国民が自由を乱用するのではないかと恐れ、行き過ぎを防止する法的措置がとられなければ、行政が麻痺するのではないかと心配ばかりしている」

日本国民は、乱用できるほどの自由を手にしたことはなかった。


封じられた政府の意図


「行き過ぎを防止する法的措置」とは、かの悪名高き思想統制の復活を狙ったのだ。

それ故、GHQ民政局は、「個人的自由より国家優先論を前に出す傾向が強い日本政府の動き」に敏感に反応し、日本政府の意図を完全に封じた。

その結果をロバート・ウォード(アメリカの政治学者)は、「(憲法の)第3章は、市民的自由の擁護としては世界でも最も広範囲なものである」と的確に要約した。


「危険思想」の所在


「危険思想」というものは、日本ではもはやありえないことになった。

しかし、GHQは、日本のあらゆる印刷物、教科書、ラジオの内容の事前検閲や手紙の開封に忙しかった。「危険思想」を探していた。

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