運命の電文


その日、マッカーサーは、シカゴで8月28日に開催される退役軍人会全国大会で読まれるための7頁におよぶ長い電文を東京から送った。

彼は、これをAP通信を通して送った。

即ち、公にしてもよいということだ。マッカーサーは、「太平洋は、我々が維持しているかぎり、我々を護る巨大な濠である。......この線を護れば、我々は平和を維持できる。失えば、戦争だ」と断言した。

そして、「台湾の蒋介石を支持しているという印象を与えないように」というトルーマン大統領の命令に挑戦するかのように、台湾がアメリカの安全保障にとっていかに必要不可欠であるかを、とうとうと述べた。

「我々が台湾を防衛すれば、我々は中国と不和になると騒いでいる連中がいるが、太平洋地域において、譲歩と敗北主義を振り翳している薄っぺらな議論以上に誤ったものはない」。

356.jpg



大統領令


トルーマン、眼中になし、である。

閣僚の中で、このマッカーサーの電文を最初に見つけたのは、アチソン国務長官であった。彼はすぐさまハリマンに電話した。

ハリマンは、翌日早朝、大統領にその電文を手渡した。

トルーマン大統領は、アチソン国務長官、ジョンソン国防長官、統合参謀本部の長官全員、それにハリマンが、会議室で全く別の問題について検討しているところへ、ノックもせず入って来た。

全員、起立した。

アチソン国務長官は、その時を次のように回想している。

「大統領は、片手に黄色いAP通信の電信文を持っておられた。彼は、それをホワイト・ハウスの記者クラブから勝手にとってこられたのだ」「大統領は、私たちに坐れと命じられた」



激昂


「大統領は、明らかに激怒しておられ、マッカーサーの電文を最初から最後まで声を出して読み通された。それから、〝この部屋にいる一人一人に聞く。誰かこれについて何か知っている者はいるのか、何等かの形で、これに少しでも関わっている者はいるのか〟と言われ、我々一人一人に同じ質問をされた。この大統領の詰問が終わった時には、我々は完全に怯えきっていた」

「大統領は、マッカーサーの上司であるルイス・ジョンソン国防長官のほうを向いて、〝この手紙を撤回してもらいたい。お前は、マッカーサーにこの電文を撤回するよう命令を出せ。これは私からの命令だ。分かっているのか〟」

「〝はい閣下、分かりました〟とジョンソンは答えた」

「大統領は、〝では、今すぐやれ。それだけだ〟と言われた」

「その直後、みんな逃げるように外へ出、あっという間にいなくなった」