blog18.jpgFrom:岡崎 匡史
研究室より

占領下日本、マッカーサー元帥の独断で出版禁止にされた書籍がある。

その代表的な「禁断の書」とは?

ヘレン・ミアーズ著『アメリカの鏡・日本』である。

『アメリカの鏡・日本』は、終戦直後の1948年にアメリカで出版された。ところが、「占領が終わらなければ、日本人は、この本を日本語で読むことができない」と、マッカーサー自身の手により出版が許されなかった。

マッカーサーはミアーズの本を自ら検閲。占領下の日本で翻訳されると「事実とプロパガンダを区別できない日本人にとって悪影響」である、と判断した。

アメリカの反省


『アメリカの鏡・日本』の邦訳は、1953(昭和 28)年に原百代(はらももよ・1921〜1991)の翻訳で『アメリカの反省』というタイトルで発売された。

原は、アメリカの「言論の自由」は偉大であると信じていた。占領下の 1949(昭和 24)年にミアーズの本を出版するために、原は GHQの民間情報教育局に出版許可を得ようと掛け合った。

しかし、なかなか出版許可が下りない。しびれを切らした原は、次のように訴える。


「これ程、條理(じょうり)を盡(つ)くして頼むのに、何故、いけないのか」「いけないならいけないで、何故、 不可なのか、その明確な理由を與(あた)へてはくれないのか」


それでもなお、 CIE から明確な説明を得ることはできない。原はアメリカの「言論の自由」に幻滅した、、、

言論封殺


ミアーズの見方を要約すると、日本はただ欧米の帝国主義政策を真似しただけであり、「日本の行動は欧米の行動そのもの」と論じたのある。本のタイトル「鏡」とは欧米そのものを映しだしたのだ。

ミアーズは、アメリカが神のごとくに振る舞うことに疑問を投げかけている。

「日本に対しては、戦争中の感情的宣伝を証拠にして、全国民を一括処罰しようというのだ。日本国民全体を罰する私たちの権利の基盤は脆弱である」

勝者の正義で敗者の日本を裁くことには問題があると批判した。

ミアーズの主張は、後世まで語り継がれるだけの内容・分析力をもっている。だが、彼女は日本びいきとして糾弾され、この本とともに学者として世に出る機会を失ってしまった。

ミアーズの言論は、マッカーサーにとって邪魔だった。言論を封殺することは、民主主義の理念の否定である。

日本における「言論の自由」という広遠な理想は、新憲法で保障された当初から蜃気楼のように幻想であった。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参照しました。
ヘレン・ミアズ『アメリカの反省』原百代訳(文藝春秋新社、1953 年)
ヘレン・ミアーズ『アメリカの鏡・日本』伊藤延司訳(アイネックス社、1995年)
御厨貴、小塩和人『忘れられた日米関係―ヘレン・ミアーズの問い』(ちくま新書、1996 年)