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From:岡崎 匡史
研究室より

6月下旬号のフーヴァーレポートは、「トランプ政権の環境政策」でした。

温暖化に話題が集中したので、石油の歴史を補足します。

石油は古代から宗教祭式で使われたり、医療や美術の分野でひっそりと使われてきました。アメリカのインディアンも穴を掘って石油を手に入れ、火を燃やして利用しています。日本でも奈良時代の『日本書記』に、燃える水が献上されたという記録が残っています。

しかし、人類が石油をエネルギー燃料として利用し始めてから、数百年の歴史しか経っておりません。石油の歴史は浅いのです。


エネルギー革命

19世紀の革命的な発見が石油です。

1847年、英国人の化学者ジェームズ・ヤング(James Young・1811~1883)が、炭坑の中でしみだしている石油を蒸留装置で加熱し、灯油を作り出すことに成功します。

エネルギー革命の第一歩。人類が石油の価値に気づいたのです。

石油が実用化されるまでは、鯨(くじら)の油が燃料でした。日本人は鯨を食料としてきましたが、西洋人は鯨を神聖なものではなく製品とみなします。鯨からとれる鯨油(げいゆ)を、ランプの灯油として使ったのです。ロンドンでは街灯ランプが普及しており、夕暮れと共に照らしだされるランプの光が幻想的な世界を映しだしていた。

その陰に、鯨の乱獲が横たわっていた。西洋諸国は地中海や大西洋で鯨を捕りつくし、次の獲物を追い求めて太平洋へ進出する。長い航海では、食料や薪を補給しなければならない。だが、アジア(清国と日本)は鎖国をしているので漁船を停泊させることができなかった。


ペリーとクジラ


そこで欧米列強が目を付けたのが、徳川幕府が支配する幕末日本。米国の第13代ミラード・フィルモア大統領(Millard Fillmor・1800~1874)は、マシュー・C・ペリー提督(Matthew C. Perry・1794~1858)を日本に派遣する。

ペリー提督は1858(嘉永6)年、黒船(軍艦)四隻を率いて浦賀に来航。全戦艦の大砲を対岸に向け牽制し、江戸幕府を恫喝。日本国中が震撼し、尊王攘夷の嵐が巻き起こる。江戸幕府は圧倒的な武力の前にひれ伏し、幕府の威信は揺らぎ、200年以上も続いた「鎖国」が破られ、日本は開国させられた。

侍たちが明治維新へ向けて血なまぐさい殺し合いを繰り返している頃、世界のエネルギー燃料は鯨油から石油へと転換しはじめていく。


「石油の歴史ー2」に続く。
ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
浦野起央『地政学と国際戦略―新しい安全保障の枠組みに向けて』(三和書籍、2006年)