blog26.jpgFrom:岡崎 匡史
研究室より

(「小麦戦略-1」から続き)

米国占領下の日本では、空腹に耐えかねた民衆が暴動を起こしていた。

マッカーサーとしても、暴動が起こることは耐えられない。
自らの統治能力が問われるからだ。
餓死者がでようものなら沽券に関わる。

宣撫政策

GHQとしては食糧を与え、人心を掌握する宣撫(せんぶ)政策をとらなければならない。子どもたちが栄養失調であれば、日本の再建はままならない。

だが、学校給食プログラムを再開させるにしても、厚生省(現・厚生労働省)の予算は底をついている。

どうしたら、バランスのとれた食事を児童に提供することできるのか? どのような食品で不足しがちな栄養分を補うのか?


学童たちに栄養のあるものを与えようとしても、缶詰の肉は高価だし、生肉を輸入しても貯蔵する施設もない。

パン食文化

GHQの公衆衛生福祉局が目を付けたのは「脱脂粉乳」と「小麦」である。

冷凍設備すらない敗戦国日本では、脱脂粉乳と小麦は腐敗することなく蓄えることができる。しかも、容易に配達が可能だ。

「小麦」はアメリカで大量生産されている。

栄養豊富な脱脂粉乳を学校給食の献立として出すことで、児童のタンパク質・カルシウム不足を補い、肉類のような食品の味を覚えさせることもできる。こうして、「コッペパン」を主食とする献立が給食に登場した。

日本にパン食文化が根づいた瞬間である。

子どものころ覚えた味は、大人になっても忘れない。
白米からパンへの食生活の変化は、GHQの占領政策が根本にあった。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
Crowford F. Sams, Medic: The Mission of an American Military Doctor in Occupied Japan and Wartorn Korea, Rutledge, 1997.
クロフォード・F・サムス『GHQサムス准将の改革』(桐書房、2007年)
大磯敏雄『混迷のなかの飽食』(医歯薬出版株式会社、1980年)
鈴木猛夫『「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活』(藤原書店、2003年)