「男子村」の様子


私は大学の男子寮に入った。ルーム・メートは、日本語を専攻していた背の高い21歳のアメリ力人ポール君。

彼の日本語会話力は、私の英会話力と同じ。お互い生き残るため家庭教師ごっこをした。

生まれて初めての寮生活で、同世代の「男子村」に放り込まれ、米社会入門はリハーサルのない本番の連続であった。今では男女共学の寮が当たり前になっているが、1964年の頃、若い「雄」と「雌」は交わらないように隔離されていた。月曜日の早朝から金曜日の昼頃まで寮内はとても静か。みんな猛勉強をしていた。


ダンス・パーティー


金曜日の夕方になると、寮内の空気がガラリと変わり、男性ホルモンが有り余った動物たちが群れを組んで格闘技に出陣するという雰囲気になった。

寮の一階の広いロビーでライブ・バンド付きのダンス・パーティーがあり、おめかしをした女子学生たちがドッと押し寄せてきた。私もロビーへ下りていった。男女が肉団子状態で大混雑。

ボリュームをいっぱいに上げたバンドと光を落とした照明で、誰が誰やら分からず、ボーと突っ立っていたら、「アーユー・フロム・ジャパン?(日本から来たの)」と女子学生が大きな声で話しかけてきた。大きな声を出さないと、何も聞こえない。

私は「イエス!アーユー・フロム・アメリカ?」と尋ねた。英語が分からないとは、このような間抜けの状態を指すのである。

彼女が「外へ出ない?」と誘ったので、喜んで外へ出た。


大佐の娘


彼女の名前はジュリア。「父はアメリカ陸軍大佐で、私たち3年間横浜に住んでたの。去年、帰国し、今、1年生」と教えてくれた。いちご色の金髪で睫毛まで赤かった。肌の色は赤毛の人に特有のミルク色の深い白。

彼女は何かに興奮して早口で喋っていた。私は、もちろん、聞き取れない。白人の若い女性を体温が感じられるほど間近で見たことがなかったので、私は彼女の顔を品定めしていた。美人である。


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私は無理解のまま相槌を打ちながら、「ボクに一目惚れしている」と妄想に耽っていた。



西鋭夫著『日米魂力戦』

第1章「遊学1964年」-15