不思議な和製英語


今回私が帰国して、分からなかった最初の日本語は「デフレ・スパイラル」。

国内で個人消費が危機的に少ないため、経済が蟻地獄に落ち込み這い上がれない状態の意味なのだろう。鳴門海峡の怖い渦に巻き込まれ、藻搔けば藻搔くほど深みへ沈んでゆくような日本経済の現状を表現したいのだろう(スパイラルは、液体または気体が渦状に動いている状態を意味する英単語。上に向かって渦状に動いているのも、スパイラル)。

カタカナ交じりを使う人たちは「頭がいい」と思われると錯覚をしているのか。カタカナを使えば、現状の厳しさを直接肌に感じないので、なんとか耐えられるのか。

政府の高官や大学の教授たちがたびたび使う「スパイラル」だが、この英単語を知らない大多数の日本人は恥ずかしがることはない。使う方が恥ずかしいのだ。

日本人は外国人から英語で話しかけられると、日本語で答えればいいのに英語で答えようとする。通じないと劣等感に悩まされる。

外国人が日本語を学び、通じないと「困ったな」と思うのが普通なのだ。


英会話症候群


だが、1億2500万人が熱病に取り憑かれたかのように英会話の練習に励み、「英単語350個を憶えればネイティブと話ができる」といった餌に釣られ、高い授業料を払いアメリカの国語を学んでいる。

350語の日本語で会話なぞできないではないかと正気に戻れば、日本を襲っている英会話症候群に便乗して金儲けをしている業者に騙されないのだが......。


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傷は、すでに深い。文部科学省までも英会話を「国際化」と錯覚し、「話せる英語」を習得しなければならないと英語圏から人を雇い、全国の学校へ配置している。日本語の漢字を知らない小学生にも「英会話に触れる機会を持たせる」と言う。

1年ほど前、柏市のマクドナルドで、娘と息子が好きな「ハッピー・セット」(アメリカではハッピー・ミール)を注文した。なぜ「ミール・食事」が「セット」になったのか説明がない。アメリカで「ハッピー・セット」は通じない。高校生であろう、アルバイトのお嬢さんが私の日本語での注文を英語で反復し、他のアルバイトに英語で伝えた。

英語第二公用語化は、文部科学省の指導を待つことなく順調に進行中である。英語狂乱は我々の欧米文化に対する劣等感の表れか、それとも米国の対日占領の輝ける業績か。


文化力としての言語


英語は、疑いもなく国際語だ。日本の外へ一歩でも出ると、もう英語圏。だが、英語を学ぶために日本語を犠牲にしてはいけない。母国語を学び、さらに英語を習得するから英語力が特別な「力」となる。語学力は他国の文化の扉を開くので、文化力でもある。

日本語を国際語にするためには、どうすればよいのかとの構想がどこからも出てこない。

日本の巨額なODA・援助金(年間1兆3000億円)を駆使して、世界中に学校を建て、日本人教師を送り込み、授業料タダで日本文化と日本語を広めてはどうだろうか。この学校で、世界中の優秀な人材を選別できる。

世界の秀才を日本に招待し、日本経済と文化の成長に貢献してもらおう。



西鋭夫著『日米魂力戦』

第4章「国の意識」の違い -4