blog61.jpgFrom:岡崎 匡史
研究室より

2018年4月11日(水)、中華民国の馬英九前総統(1950〜・台北市長・国民党主席・第12代・第13代総統を歴任)がスタンフォード大学に来校しました。講演会場がフーヴァー研究所でしたので、私も参席してお話を賜る機会を頂きました。

「台湾の経済・台中関係・民主主義」に関する1時間ほどのレクチャーと質疑応答です。簡潔に話の骨子を紹介します。

中台首脳会談

2015年11月7日、シンガポールのホテルにて「中台首脳会談」が行われた。世にいう「習近平・馬英九会談」である。

1949年に蔣介石の国民党政府が共産党との戦いに敗れ、台湾の台北に遷都をしてから、中国と台湾のトップ会談は初めてのことである。

馬英九前総統は、台湾が平和的な発展を遂げるためには、中国本土との関係強化が大事である。習近平総書記を聡明で、注意深く言葉を選ぶ人物と評価。

些細なことかもしれないが、会場のホテル代は誰が払うのか。食事代はどちらが持つのか、ということで気を揉んだ(註:中華圏は互いの面子(メンツ)を重んじており、「面子外交」という言葉さえある)。

中国と台湾の結論は、「Let's go dutch !」(割り勘にしよう)ということで落ち着いたという。

一つの中国

馬英九前総統は、中国と台湾の当局間で合意した「1992年コンセンサス」を継承し、中国との友好関係を築き、中台関係の促進を試みた。

中国と台湾は「一つの中国」(One China Policy)を堅持している(註:もちろん、「一つの中国」という言葉の解釈は定まっておらず各国に委ねており、独立志向の強い民進党は「一つの中国」論に与しておらず、1992年コンセンサスにも否定的である)。

消極的な文脈ではあったが、馬英九前総統の口から「One China, One Taiwan」という言葉が一言だけ発せられたのが印象的であった。

なぜかというと、アメリカは、1979年にニクソン大統領が台湾と断交して以来、台湾を独立国家として扱うことを避けてきた。中国政府も台湾が独立国家として振る舞うことを許さない。国際機関の会議では、台湾はオブザーバーという扱いをうけることさえある。

台湾独立の機運が再び高まると、「二つの中国論」として「One China, One Taiwan」というフレーズが蘇ってくるかもしれない。

原子力発電

エネルギー政策に関して馬英九前総統は、台湾は原子力発電を再開させるであろう、という見解を示した(註:現在、台湾の政権を担っている民進党の蔡英文総統(1956〜副首相・民進党主席を歴任し第14代総統)は、「脱原発」を打ち出しており、2025年までに原発全廃の方針を掲げている)。

国土が狭く、資源物資を輸入に頼っている台湾にとって、自国でエネルギーを発電できる原子力発電は魅力的だ。福島で大震災と津波を経験した日本でさえも、原子力発電を再開させているではないか。

もちろん、オーストラリアから原料となるウランを輸入しており、放射性廃棄物処理の課題もあるが、2017年8月に台湾で発生した大規模停電のような事態を避けなければならない。

以上、講演会メモより。



ー岡崎 匡史