ジャパン・アズ・ナンバー・ワン


ベトナム戦争の深傷から回復していなかった米国、出口の見えない不況に苦しむ米国は、日本円の強さと日本経済の怒濤に押され、「日本、恐ろしや」と畏敬の念を抱かずにはおれなかった。

21世紀は「日本の世紀」とか、ジャパン・アズ・ナンバー・ワンとおだてられ、煩悩に舞い上がっていた日本は、盛者必衰の理を忘れ、純金のお風呂で満面に笑みを浮かべ、除夜の鐘を聞きながら栄華が永久に続くと思いこみ、酒池肉林の宴に酔った。

『ジャパン・アズ・ナンバー・ワン』を書いたアメリカ人はハーバード大学の教授で、またCIAの調査・分析官でもある。アメリカに高く評価されることを渇望していた日本でこの本はベスト・セラーになった。

宴に酔うなといっても、1980年代の日本は世界の金融・経済を牛耳っており、踊りたくもなったのには理由があった。日本の国民総資産額と個人金融資産額は、世界で1番。

東京証券取引所のお金の動きがニューヨークのウォール街を一喜一憂させ、土地神話に支えられた日本(カリフォルニア州より小さい島)の土地総額で全米が買えた。世界の銀行のトップ・テンは、日本の銀行。日本と日本人が桁違いにお金持ちになっていた。


ニッポン・ブーム


大不況に喘ぎ、自信喪失のアメリカ人は真っ青になり、戦後初めて真剣なまなざしでニッポンを見た。米国が最も大切にしているお金の世界で日本に「下剋上」をやられたのだ。

「弱い国」と半ば馬鹿にしていたニッポンを猛烈に研究しはじめた。

大学では、日本語や日本研究が大ブームになり、製造企業も「ジャスト・イン・タイム」というトヨタの製造方式を導入する。今や、寿司はみんなが大好きな健康食である。どこのスーパーに行っても「sushi」を売っている。スタンフォード大学の学生食堂でも売っている。醤油はキッコーマン。高級住宅地のスーパーでは、はちまきをした職人がにぎり寿司を作り即売している。ネタは豊富だ。

これら全て日本の経済力の影響である。


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現代版ローマ帝国


米国は「強さ」を特別に尊敬する国だ、と私は確認した。

米国は、文明文化と戦争と平和を司るローマ帝国だ。全ての道は、米国へ続いている。帝国の雰囲気を持っている国は、例外なく「力」を判断の基準とする。日本が強くなった時だけ、米国は日本に注目する。日本は尊敬されたいのなら、存在感を誇示したいのなら、どの分野でもいいから米国に勝たねばならない。それも、徹底的に勝つこと。

医学に革命をもたらすDNA(遺伝子)の研究では、すでに米国が勝ちだ。新しい文明を創るとまで高く評価されているナノ・テクノロジー(超微細技術・ナノは10億分の1)の激戦で日本はどこまで戦えるのか。日米で、いや世界中で「産業スパイ」が暗躍する最前線は、目に見えない水面下で壮絶な戦いになっている。



西鋭夫著『日米魂力戦』

第5章 戦争と平成日本 -8