悪の枢軸


2003年4月23〜25日、北朝鮮と米国と中国が北京で北朝鮮の核について話し合っている時、北朝鮮の代表が米代表に「核爆弾を持っている」と発言した。動転したのは米政府ではなく、日本政府だ。日本政府は、「本当か」と議論中である。「拉致問題は解決した」とうそぶくテロ国家が「核兵器を持っている」と言ったら、その真偽を確かめる手段も方法も持っていない日本で最初にすることは「防衛」である。

ただの脅しであってくれれば良いと願望に頼っている時間はない。米政府は北朝鮮の核保有を緊急重大事件と受け止めている。ブッシュ大統領は「イラク、北朝鮮、イランは悪の枢軸である」と世界に向けて警告し、これら悪の3カ国が自ら改善するか、さもなければ武力を使ってでも「国」を変えさせるという決断を表明した。

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日本カード


「悪の枢軸」の「悪・Evil」は日本語の「悪い」ではなく、キリスト教でいう「神」に敵対する「悪魔」の意味だ。「魂」そのものが救いがたい極悪なのである。悪の伝染病が世界中に拡散し、数多くの犠牲者を出す前に殺さなければならない、という発想だ。それ故、米国民の頭の中で「先制攻撃」が正当化される。2003年3月19日の夜に開始された第二次湾岸・イラク戦争は、米国の「先制攻撃」である。

金正日総書記は、米政府の口実を封じるために日本を使った。日本人拉致を素直に白状すれば、日本国民が許してくれると読み間違えた。小泉首相は北朝鮮が凶暴な国と知っていたが、実際に目の前でテロ国家の独裁者が「拉致」を認めたのを見て、言葉を失ったまま帰ってきた。

激怒したのは日本国民だ。「国交正常化交渉中止」と暴動寸前の精神状態である。日本政府は、この「北朝鮮不利」を外交の武器として国交正常化に使えばよいのだが、そこまで勇気のある政治家は出てこず、この絶好の機会をみすみす見逃している。

「日本カード」を失った北朝鮮はより好戦的な姿勢をとり、テポドンを威嚇発射したり、核兵器を多量に製造する暴挙に出て、アメリカの注意を引くことに懸命である。北朝鮮は努力をしなくても、米政府に睨まれている。




西鋭夫著『日米魂力戦』

第5章 戦争と平成日本 -38