誰が起草したのか


私が「報告書」を初めて読んだのは、ワシントン大学の大学院で博士課程に在学し、アメリカ外交史を研究していた時だ。あの時の激しい衝撃は今でも覚えている。特に「報告書」は、「日本語の根本的改革を勧告する」と宣言し、信じられない提案を正式に出してきた。

 
前述のように、ストッダード団長は、「報告書」はあらまし自分が執筆したとニューヨークで私に語ったが、その時、彼は「国語問題の部分を書いたのは私ではなく、ジョージ・カウンツだった」と付け加えるのを忘れなかった。
 
カウンツも世界的に著名な比較教育学者でコロンビア大学教授だった。ストッダード団長が責任を取りたくないと逃げたのには、それなりの理由があるからだ。

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降伏前の秘密覚書


私はワシントンDCにある国立公文書館で資料を検索中(1978年3月)、「公式表記文字としてのカタカナ専用」と題する秘密覚書を発見した。これが執筆されたのは、1945年6月23日、日本の降伏二か月前である。
 
執筆者はロバート・キング・ホール中尉で、当時、カリフォルニア州モンテレーにあったCASA(軍政要員準備機関)日本占領企画本部の教育部長であった。占領開始直後、ホールは東京のGHQで教育担当官の任に就き、教育使節団の「報告書」と密接なつながりを持っていた。


ホールのロジック

ホールはこの覚書の中で、「軍事占領下の日本では、すべて表記による伝達はカタカナに統一すべきであり、漢字で書かれたものの使用は禁止すべきである」と勧告している。少し長くなるが、ホール中尉の理由を引用したい。ここに、日本に対するアメリカの態度がハッキリと見える。

まず、ホールは自分の着想の利点を強調している。

1.漢字の禁止は戦前の政治宣伝との接触を禁じるうえに大いに役立つ。
 
もし漢字で書かれた図書、文書を禁止すれば、こうしたものの所持は違法となる。漢字で書かれた既存の文書を廃棄せよというのではない。図書館所有のものを押収するので十分である。占領軍は "焚書" の汚名を着せられるのを避けられるだろう。


 

西鋭夫著『富国弱民ニッポン』
第2章 富国日本の現状−11