blog114.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より

第120代ローマ教皇のピオ12世(在位1939〜1958年)は、評価の分かれる人物です。

なぜなら、教皇ピオ12世はナチス・ドイツの「ホロコースト」(大虐殺)を知りながら、断固とした態度をとらなかったからです。

その一方で、教皇ピオ12世を擁護する者は、ナチス占領下に組み込まれた各地域のカトリック教徒を守るためには、宥和的な政策を表面上とらざるを得なかったと反論します。

はたして、この疑問に決着がつく日が来るのでしょうか?

2020年に極秘公開


そんな折、ある雑誌の記事が目にとまりました。「秘密文書館に眠っている第2次大戦時の文書を公開へ」というニュース記事です。

2019年3月、第226代の教皇フランシスコ(在位2013年〜)は、「ピオ12世の教皇就任81周年に当たる2020年3月2日に、教皇庁の秘密文書館を公開する」と述べられた。そして、「カトリック教会は歴史を恐れない」「ピオ12世は20世紀の最も悲しく暗い時期にカトリック教会を率いることになったのだ」と言及なされた。

教皇フランシスコが、大きな決断をしたようです。くすぶり続けている論争に終止符を打ちたいのかもしれません。というのも様々な伏線があったからです。

衝撃を与えた書物に、ジョン・コーンウェル著『Hitler's Pope』(ヒトラーの教皇)があります。タイトルからみてのとおり、教皇ピオ12世とナチスを調査した書籍です。残念ながら、和訳されておりません。

この本が大きな論争を呼んだことから、ドキュメンタリー映画『Pope vs Hitler』(教皇 対 ヒトラー:2016年)も公開されました。残念ながら、日本語字幕のビデオもありません。

こうしてみると翻訳大国の日本であっても、重要な知識や情報が広がりにくい分野が残っております。といっても、これは学術の分野でも同じことです。なぜなら、ヴァチカン文書館の史料を調査するのは、至難の業だからです。

ヴァチカン文書館


ヴァチカンの歴史を調べるには、日本語と英語ではまったく歯が立ちません。ラテン語やイタリア語、欧州各国の言語が不可欠です。だから、第二次世界大戦中のヴァチカンと日本に関する書籍は数少ない。もちろん、英語の文献も限られている。

数年前、ヴァチカンを訪れたとき、サン・ピエトロ大聖堂周辺の古本屋をくまなく歩いて回りました。しかし、なかなか参考になる本に出逢えない。書店のおじさんも、「う〜ん。アジア関連なら、少しあるけど、日本とヴァチカンの書籍は見たことないな」と困り顔。

そのとき紹介されたのが、Regis Ladous著『Le Vatican et le Japon dans la guerre de la Grande Asie orientale』です。占領下日本に対するヴァチカンの最新の研究成果がつまっている。ところが、フランス語で執筆されている、、、目の前が真っ暗になりました。ぜひ邦訳が待ち望まれる。

日本とヨーロッパを結びつける研究は、予想以上に難しい。若い研究者が出てきて戦略的に取り組めば、きっと大きな学問的な業績になるはず!


ー岡崎 匡史
PS. 以下の文献を参考にしました。
・「秘密文書館に眠っている第2次大戦時の文書を公開へ」『福音と社会』カトリック社会問題研究所、303号、2019年