アメリカの面潰し

バブル経済で調子に乗った日本が、アメリカで何をしたか、卑近な例を挙げてみればすぐわかる。「アメリカのいいところ、いいもの、アメリカの象徴」に日本が手を出したのだ。

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ニューヨークの巨大なクリスマスツリーで世界的に有名なロックフェラー・センターを、三菱地所が買い上げた。1989~90年のことだ。当時の日本円で約2000億円だった。



私はアメリカに住んでいて、「まるでアメリカの面を、みんなの見ている前でひっぱたいたと同じだ」と思ったし、また私の友人たちにもそう言った。


友人たちは作り笑いし、私の感情を害さないように、「売るほうも売るほうだな、ロックフェラーも地に落ちた」と吐き捨てた。


繰り返される「アメリカ買い」


エレクトロニクスのハードウェアでは世界市場をほぼ独占している松下もソニーも、将来のソフトウェアを確保するためハリウッドを買い、今や大赤字。松下はMCA(アメリカの大手映画会社)を手放さなければならないほどの大失態。ソニーはコロムビア社で目も当てられないほどの巨額の大損。


アメリカで最もすばらしいといわれているゴルフコース、カリフォルニアにあるぺブルビーチも日本企業が買い占めたが、これもまもなく手放すというウワサが立っている。また、アメリカのリゾート地でのホテル、ハワイでのホテルを軒並みに買い占めたのも日本。だが、日本は今や経済大低迷なので、これらのホテルもほとんど全部売りに出ている。叩き売りだそうだ。


三菱地所は、ロックフェラーセンターをわずか6年ほどで手放すことになった。金に困っていたロックフェラー家にうまく乗せられたのではないか(ロックフェラーセンターを2000億円で買った三菱地所は、1996年7月、同センターの創立者の息子デービッド・ロックフェラーがわずか330億円で、そのセンターを取り返した記事をいかなる心情で受けとめたのだろうか)。ロックフェラーセンターは、日本の丸ビルと霞ヶ関ビルを合わせたようなものだ。


「金融愚行大賞」受賞


日本にハリウッドの映画会社に匹敵するものはない。ハリウッドは世界のハリウッド。松下とソニーがハリウッドのような仁義なき「村」、かつ流動的な人脈の暗黒社会で、経営経験もないのに、ただ「強い円」だけに頼り、なんとかなるだろうと膨大な金を注ぎ込み、まんまとしてやられ、あげくの果てには会社まで取り上げられた。


そんな日本をアメリカの誰が尊敬するのか。アメリカ人は日本をバカにして笑っている。事実、アメリカで最も権威のある新聞「ニューヨーク・タイムズ」(1995年12月24日)は、1995年度の「金融愚行大賞」をソニーと三菱地所に贈った。ソニーは皮肉たっぷりの「太っ腹経営賞」をもらった。というのも、ソニーの映画部門の責任者であったピーター・グルーバーが大損失を出し、クビになった。ところが、グルーバーはソニーより一枚上手で、ソニーから自分の新会社を設立するために数億ドルを巻き上げた。三菱地所は「ワイルド・コヨーテ賞」をもらった。すなわち、マンガの主人公コヨーテは大ドジで何をしてもラチがあかず、すべてが己に跳ね返り、前よりもいっそう窮地に陥る。それが三菱地所だと笑われた。


「ニューヨーク・タイムズ」は、国際不正取引でアメリカ追放命令を受けた大和銀行と、その犯罪行為をひた隠しに隠した大蔵省との見事な連携作戦に、「チーム・ワーク賞」を与えた。




西鋭夫著『富国弱民ニッポン』
第3章 富国日本の現状−7