輸入政策の偏り

日本がアメリカから、いくらオレンジ、牛肉、ブタ肉、小麦、バター、リンゴ、トウモロコシ、米(農産物ばかり)を買っても、アメリカは満足しない(日本は食料の60%以上を輸入している。日本人の大好きなエビはほぼ100%が輸入だ。アメリカの輸出農産物の20%は日本が購入している)。


日本が高価なボーイング・ジェット機を毎年数十機買っても、アメリカは満足しない(日航や全日空はヨーロッバのエアバスを買わないで、ボーイング製だけを注文する。アメリカへの奉仕だ)。


日本が巨額のアメリカ製スーパーコンピューターを何十台買っても、アメリカは文句を言う(IBMの世界市場での総売上げは5兆円。そのうち、1兆円は日本の市場からだ)。


米国の不満

アメリカの象徴、自動車を日本が本気で輸入しなければ、アメリカのヒステリーは治まらない。この2、3年、日本の自動車市場は開かれてきているが、アメリカは自国の市場が30%も日本車に押さえられている現実に怒り狂っている。アメリカ車が日本で2~5%増えたぐらいで、アメリカの強硬な要求が収まるわけがない。アメリカは日本が「公平でない」と叫んでいる。


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アメリカは、今まで「日本市場でアメリカ車を売る公平なチャンスをくれ」と言っていたが、今や、そんなことは言わなくなり、数値をハッキリと示してアメリカ車を買えと日本に命令する。


販売網の違い

ここで一点付け加えなければならないことがある。日本車がなぜあんなに早くアメリカ市場の中へ進出できたかというと、日本の自動車会社はアメリカでフォード、クライスラー、ゼネラル・モーターズのディーラー(小売店)網を使うことができたからだ。フォード車を売る店で、現にホンダやトヨタを売っている。

日本ではトヨタを売っている店はトヨタ車だけだ。フォード車を売りたいと思っても、トヨタからの圧力で売れない。この違いのある現状の中で、「アメリカの努力が足らないから、アメリカ車が売れないのだ」という日本政府および企業の言葉に怒り狂わないほうがおかしいのだ。


橋本龍太郎元通産大臣が、たとえ竹刀を持ち出してミッキー・カンター通商代表とケンカをしようが、日本政府はアメリカの「自動車宗教」について何もわかっていない。アメリカ側は憤懣やるかたないので、日本側の言い分などロクに聞いていない。日本政府もこのへんで根性のあるところを世界に見せ、日本の「スジ」を通すつもりでWTOに提訴したが、それで勝ったつもりなのか。

日本が勝てば、アメリカの態度はよりいっそう硬化し、大国アメリカが小さな島の属国にやられたと思い、威信回復のためによりいっそう日本を攻撃してきていただろう。日本が勝っていれば、アメリカはWTOを脱退していたかもしれない。日本は勝って大敗するという世にも哀れな状態に陥るのだ。




西鋭夫著『富国弱民ニッポン』
第3章 富国日本の現状−12