アメリカの軍旗

日本とアメリカが過去25年間、「自動車」交渉をしているのには理由がある。アメリカにとって、「自動車」は「軍旗」だからだ。その「軍旗」を日本がねらっていると信じ込んでいる。


日本にアメリカ車が走り回っていなければ、何を説明してもアメリカには通じないし、日本が数字を掲げて懸命に自国の正当さを述べれば述べるほど、アメリカは日本に対して疑いを深める。「数字」にだまされるか、といった心理状態だ。


それでは正当な交渉が成り立たないではないか、と日本国民は思うだろう。そのとおり。成り立っていない。

効果なきWTO提訴

戦後50年間、日本とアメリカは数え切れないほどの「交渉」をしてきた。アメリカから見ていると、それは交渉ではなく、日本の「妥協」と映る。日米貿易交渉は日本の妥協の歴史だ。アメリカは日本を脅し、大声を出して叱り飛ばせば、いずれ落ちると信じ切っている。


だから、今さら、日本が自動車の部品でWTOに提訴するとは何事かとアメリカは驚いている。50年間、日本の譲歩に慣れ切っているアメリカは、日本の突然の「強気」に鳩が豆鉄砲を食らったように一時的にポカンとしているのだろう。


WTOなど役に立たねば脱退すればよいと考えているアメリカは、力づくでも日本にアメリカ産業の象徴、自動車を送り込み、東京にアメリカの「軍旗」を輝かしくなびかせるつもりなのだ。

「フェアでない」日本

日本の自動車会社とアメリカの自動車会社は、もうすでにいろいろな面で協力し、製品も互いに交換使用し、それほどの大問題はないように思える。しかし、アメリカは一般庶民の感情をとても大切にする国だ。そのアメリカ庶民たちが、日本は"unfair"(フェアでない)と信じ込んでいる。日本は身勝手だと結論している。

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「日本車4000万台」対「アメリカ車40万台」の数字を見せられれば、その理由はいかなるものであれ、「日本が悪い!」となる。アメリカはもう日本を甘やかすつもりもないし、その余裕もない。


1953年、すなわちアメリカの日本占領が終わってから1年、アメリカ車は日本市場の60%を牛耳っていた。それが今、たったの1~2%。




西鋭夫著『富国弱民ニッポン』
第3章 富国日本の現状−15