blog118.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より

英語の勉強の話になると、よく質問されることがあります。
それは「辞書」に関してです。

私自身、二つの私立大学で英語の非常勤講師をしていましたが、100回以上は辞書について質問を受けました。

どの辞書を使って勉強すれば、英語が出来るようになるのか?
「効率的」に勉強するには、どうすべきなのか?

このような疑問を投げかけられると、「またこの質問か」と思ってしまいます。なぜかというと、「効率」という名の下に「楽をしたい」という学生の思惑が見え隠れしており、返答するのに躊躇してしまうからです。

「勉強や研究には、一見、無駄にみえるようなことも大事なんだよ」と諭したいけれど、「きっと納得してもらえないだろうな」とも思ってしまう。

英和大辞典

こういった学生には、決意表明として高価な「英和大辞典」を買うことを勧めています。本気で学ぶ気持ちがあるなら、最初に大きな投資をして、後戻りできない覚悟をしてしてもらう。

「小学館」「大修館書店」「研究社」の三社が大辞典を発行しています。長年の辞書編纂の経験と知識を集大成した看板辞書のなかから、自分の好みにあう辞書を選んでもらう。


① 高橋作太郎編『リーダーズ英和辞典 第2版』(研究社、2012年)

② 小学館ランダムハウス英和大辞典第二版編集『ランダムハウス英和大辞典 第2版』(小学館、1993年)
③ 小西友七、南出康世編『ジーニアス英和大辞典』(大修館書店、2001年)
④ 竹林滋編『新英和大辞典 第6版』(研究社、2002年)

『リーダーズ英和辞典』は、大辞典ではなく中型ですが、収録語数が多く、愛用している人も多い。訳がこなれているので、フーヴァーダイジェストの編集のとき、訳語の確認にも使っています。また、中村保男著『新編 英和翻訳表現辞典』(研究社、2002年)は大いに参照している辞典です。

私は②のランダムハウスを愛用しています。第3版の改訂版を首を長くして待ち続けています。

大辞典の効用

そもそも、なぜ、高価な辞書を買うのか? 

本格的な翻訳になると、辞書を何冊も参照しなくてはならなりません。であれば、最初に頼るべきは「大辞典」になる。小辞典だと、訳語が記載されていないことがあるからです。


翻訳者として著名な山岡洋一は、『翻訳とは何か 職業としての翻訳』(日外アソシエーツ、2001年)という著書で、「翻訳は情報集約業の仕事なので、大量の情報をいつでも使えるようにしておかないと、仕事がはかどらない」という。

彼はさらに続けて、「辞書や資料なども、中高生向けのものでは話にならない。一冊数万円もするようなプロ向けのものを揃えなければならない。辞書や資料がどれだけ必要なのかは、分野によって違うし、仕事の性格によっても違う。しかし、プロの翻訳者なら買える辞書はすべてかっておこうとするはずである。数冊ではなく、数十冊ですらなく、少なくとも数百冊、多ければ数千冊を超える辞書や資料を持っている」と語っている。

学者の研究の「質」も蔵書量に左右されるように、翻訳家の「質」も辞書に依る。そして、あくなき「言語」への探究心が不可欠です。


ー岡崎 匡史