自由貿易の拒否

ハイテク先進国と自負しているアメリカの誇りをさらに傷つけたのは、日本がアメリカの農産物しか買わないことだ。オレンジ、リンゴ、サクランボ、小麦、大豆、トウモロコシ、サラダ油、牛肉、トリ肉、カリフォルニア米......。


アメリカは自由競争して負けると思っていない。公平な機会があれば勝てると信じ切っている国だ。ましてや、日本に対して大赤字を抱えているアメリカは日本へ売りたい。


日本は応じない。それに業を煮やして、アメリカがより強い言葉を吐く。日本はそれを「ジャパン・パッシング」と呼んで、アメリカを非難し、逃げを打つ。


戦後の日米関係はこの繰り返しだ。言葉の繰り返しをしている間、日本はカネを儲け、アメリカには借金が増えた。


アメリカの変化

だが、最近、アメリカの態度に変化が見え始めた。特に目につくのは、アメリカが誇りにしている自国のハイテク業界が盛り返し、日本の驚異的なハイテク産業に恐れを感じなくなったこと。アメリカのハイテク(特にソフトウェア)が世界標準になり、世界市場を独占することができるという自信の表れが見える。

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1980年代には、日本の自動車工場へアメリカから見学者が列をなしてやって来ていたが、今や来ない。デトロイトが息を吹き返した。良くなったアメリカ車がアメリカ国内で日本車よりよく売れる。


これらの優秀なアメリカ車が日本で売れないわけがないと思っている。デトロイトは自信を持って、世界第2位の日本自動車市場に進出するつもりだ。


威信失墜の日本

東京が「カネ」の中心ではないとアメリカは思い始めた。事実、アメリカの大手金融機関は、コス卜も高く規制も多い東京から、香港やシンガボールへ移転した。


アメリカの関心が日本から東南アジアへ移動している。


さらに、大和銀行のニューヨークでの犯罪行為によるアメリカからの追放、松下電気やソニーのハリウッドでの大失敗や、アメリカのあちこちでの日本による買収の哀れな赤字結末によって、「日本のカネ」や「日本経営能力」への恐怖感は完全に消えている。




西鋭夫著『富国弱民ニッポン』
第4章 富国日本の現状−10