宿題との格闘


私は大学院の授業が始まって2ヶ月ほどして、とてもついて行けないので、エデルスタイン教授に「読むぺージを少なくしてください」と頼みに行った。

教授はニコニコとして、「日本へ帰れ」と言った。恥ずかしかった。逃げを打とうとしていたことが情けなく、恥ずかしかった。「帰りたくない」と言ったら、教授は「いったい何時間眠っているのか」と尋ねた。

「7時間ほどです」

「道理で落第寸前なわけだ。4時間で十分だ」

「4時間では、死にます」

「勉強しすぎて死んだ者はまだいない」

この会話後、1日4時間の睡眠で1年間過ごした(週末は10時間熟睡した)。


出版か、自滅か


アメリカの大学院で、討論する力よりも、専門書を速く読む力よりも、もっと大切にされる能力がある。書く力だ。研究調査の結果を説得力のある論文に仕上げる力は貴重品扱いされる。

アメリカで大学教授になるには、まず最低条件で博士号(Ph.D.)を持っていることと、論文や本の出版物(日本でいわれる「業績」)がなければならない。アメリカの大学には"Publish or Perish"という鉄則がある。

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論文、または本を出版しなければ、クビになるという、実際に実行される厳しい掟だ(博士号の代わりに、企業での業績が評価されることもある。例えば、コミュニケーション学部には著名なジャ―ナリストたちが教授として教鞭をとつており、私も彼らのクラスを受けた)。


教授になるまで


大学で教授になる過程は、次のように実に明解である。まず博士号を取り、出版物があり、インタビューの後、模擬講義を行う。それらが良ければ、「Assistant Professor、助教授」(日本での講師)として採用される。

6ヶ年の期限つきでだ。この6年間、研究論文も最低、年間3本か4本書かねばならない。

6年目に厳しい鑑査があり、それを通ると、「Associate Professor、準教授」(日本での助教授)として昇格する。このランクには「Tenure、終身在職権」が付いている。準教授になると、まずクビにならない。



西鋭夫著『富国弱民ニッポン』

結び/後記 富国日本の現状−8