blog141.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より

独裁者の心理状態とは、いかなるものなのか?

独裁者の行動原理を学ぶテキストに『独裁者のためのハンドブック』(The Dictator's Handbook)があります。

著者はフーヴァー研究所のブルース・ブエノ・デ・メスキータ教授とニューヨーク大学のアルスター・スミス教授です。

この二人の教授による独裁者分析は、本のタイトルだけでも全米で有名になりました。日本語にも、翻訳されております。この本を読むと、独裁者はすべての国家の政治的決断をし、居丈高にあらゆることまで指図する、というイメージは一変します。

独裁と忠誠


独裁者一人の力で、国家を運営することはできません。有能な側近や官僚機構や軍隊などの組織を束ねるトップには、必ず独裁者の指示に従う「忠実な部下」が不可欠です。

権力者は、部下の忠誠心を大事にし、脅威になる者は抹殺する。無能であっても、忠誠を尽くす者に信頼を置いている。しかも、自分より頭の悪い人物を側近に選んでしまいがちです。

英明で賢い権力者が登場してくることは奇跡に近い。独裁が続くと、権力はいずれ腐敗し、国家を奈落の底に落とし最悪の事態を引き起こす。

公共の福祉 vs. お友達


『独裁者のハンドブック』を読むと、独裁国家の構造が手に取るようにわかります。

民主国家の政治家は、すべての市民の福祉と財産を守り、公共の利益のために奉仕することが原則です。
しかし、独裁者は「お友達」に金を配る。なぜなら、独裁者は、税金を払っている庶民を犠牲にしても、盟友集団や側近に多額のカネを投じたほうが、はるかに効率的であると知っているからです。

もし、独裁者が、自分を支えてくれる側近に対して、賄賂を払わなかったらどうなるか。「金の切れ目が縁の切れ目」というように、あっという間に権力の座から引き落とされてしまう。

仲間に約束を果たさなかったら、裏切られ、別の新たな指導者を担ぎ出すかもしれない。だから、権力者は「お友達」にお金を払いつづけることになるのです。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
・ブルース・ブエノ・デ・メスキータ、アラスター・スミス『独裁者のためのハンドブック』(亜紀書房、2013年)