ルネッサンス


ヴェトナム反戦運動と同時に、若者の間で「反体制」を公に誇示し、服装も今までに想像もつかなかったような色彩で作られたものを身に着け、男も女も長髪で、裸足で街を歩き、キャンパスに出没する者たちが爆発的に現れた。

「ヒッピー」といわれる若者たちだ。


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1960年代末には全米で、特に大学街にあふれていた。優れたロック・ミュージシャンが数多く登場し、その他、斬新な美術分野を開拓した芸術家たちも次々と現れ、アメリカ社会文化に大ルネッサンスをもたらした。

ヒッピー族はマリファナ(大麻)を堂々と吸っていた。厳禁された「麻薬」といった感じはどこにもなく、学友たちのパーティーへ行くとタバコよりも吸われていた。国民に噓をつきながら、ヴェトナム戦争を続行する「体制」に反対および不信を表す感情も、マリファナがアメリカ社会に広まっていった原因の一つだろう。


自壊するアメリカ


私の学友もヴェ卜ナム戦争に行った。行きたくないと言っていたが、徴兵の召集状が来たら、「国のためだ。オレはバカだな......アメリカと同じだよう」と言ってヴェトナムへ飛んだ。

ヴェ卜ナム戦争は、64年8月のトンキン湾事件を契機にいっそう激化し、その後10年余も続いた。そして75年4月、ヴェトナムの南北統一と独立が実現し、結局はアメリカの大敗で幕を閉じた。アメリカの一番長い戦争だった。

ヴェトナム戦争はアメリカ国民の心理に大きな後遺症を残した。アメリカは建国以来、「自由、平等」、そして「基本的人権」を国の土台としており、他国に対し、民主主義のアメリカから戦争は決してしかけないと信じられていた。

ヴェトナムでの大惨事は、アメリカ国民に「アメリカは他国に侵略し、その地の人々を殺し、猛毒の枯れ葉剤を撒き散らし、残酷なことをしうる国」だという、今まで考えてもみなかった姿を見せつけた。アメリカ国民は自国の輝かしいイメージがガラガラと壊れるのを経験し、自己懐疑に陥った。



西鋭夫著『富国弱民ニッポン』

結び/後記 富国日本の現状−19