blog159.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より

昭和天皇の一番の思い出とは何か。

昭和天皇が頻繁にお話なされていた話題が、21歳のときの欧州訪問でした。このとき、大正天皇がご健在で、皇太子裕仁親王というお立場であった。

裕仁親王のご見聞を広めるため、海外視察が練られていたのです。海外旅行は、当時の言葉で「洋行」(ようこう)と呼ばれていた時代。

裕仁親王は、イギリス、フランス、ベルギー、オランダ、イタリア、ローマ法王庁などをご歴訪。ロンドンのヴィクトリア駅では、ジョージ5世が自ら出迎えた。当時は、「日英同盟」が結ばれていた時代。盛大な出迎えがなされた。

スーツ仕立て


裕仁親王のスーツは、ロンドンで仕立てられた。

しかし、スーツを仕立てるには、時間がかかる。ロンドンのスーツ職人が、事前にイギリス領ジブラルタルまで来て、裕仁親王の寸法を測っていたのです。

スーツが出来上がるまで、裕仁親王は軍服をお召しになっていた。そのため、当時の写真を見ると、スーツ姿と軍服姿のお写真がある。

スーツはシングル、三つ揃い、英国スタイルにこだわる。シャツの姿は、人前では失礼なのでベストを着用された。

ちなみに、ベストをやめてツーピースにしたのがアメリカ人。ツーピースは、ジャケットとズボンが基本のスタイルです。

昭和天皇のスーツ


昭和天皇のスーツの特徴は、内ポケットにボタンがない。

私たちが着ている庶民のスーツには、内ボタンがついている。なぜなら、私たちは、スーツに名刺や手帳や財布をいれる。しかし、陛下がこれらを持ち歩くことはありません。いうまでもなく、小銭を持ち歩くこともないので、ポケットの内側にある「小銭入れ」もない。

あなたが着ているスーツのポケットには、フタがあるはずです。フラップと呼んだり、「雨」の「蓋」と書いて、雨蓋(あまぶた)と呼ぶこともあります。

雨蓋という文字のごとく、ポケットの中身に雨がかかるのを防ぐためです。ですが、天皇の立場にあるお方が、ポケットに物を入れるはずもなく、基本的に雨を心配する必要もない。だから、昭和天皇は雨蓋を常に内側に入れていた。

スーツは、奥が深い。
あなたのスーツ着用の参考になれば。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました
・奥山孝夫『陛下のお仮縫い』(世界日報社、2008年)
・波多野勝『裕仁皇太子ヨーロッパ外遊記』(草思社、1998年)