対独イメージ


アメリカ人から見ると、ドイツ人は「真面目すぎるくらい真面目」です。規則などは、守りすぎるほど守る。自意識過剰な人々、というイメージもあります。ドイツ国民は自分たち以外の人々を「おつむが弱い」と思っています。

「ドイツ人はなぜあんなに威張っているのか」と問われ、私が「優秀な民族だからですよ。ナチスのアーリア人神話です」などと答えると、同僚たちはワァと笑います。

しかしこれは冗談ではなく、ドイツで生まれた文学や音楽、そして学問は、今でも非常に高く評価されています。偉大なる天才たち、哲学者ら、作曲家らを輩出したドイツは、アメリカ人からしても「インテリの国」です。日本の優秀な学生さんたちも、昔はドイツ留学が多かった。お医者さんはほとんどがドイツ帰りでした。


驕り


フォルクスワーゲンは、つまるところ、マイクロチップを誰も発見できないだろうと踏んだわけです。「俺たちが作ったものを理解することはできないだろう」、「絶対に分からないだろう」などと考えていた。消費者は完全になめられていた。

しかし、GMやフォードも、そしてトヨタやホンダ、日産なども素晴らしい車をたくさん作り始めた。ハイブリッド車、電気自動車もどんどんと市場に出始めた。そんな中、ディーゼル車を中心に開発してきたフォルクスワーゲンは焦ったのでしょう。排ガスが少ないディーゼル車を求め、連日連夜の試行錯誤。しかし、なかなか基準値をクリアできなかった。そこで登場したのが、マイクロチップだったわけです。

フォルクスワーゲンの技術力を持ってすれば開発できたはずです。出来ないわけがない。しかし、それをやると車一台につき100ドルから150ドルほど実費が上がるのでしょう。これを何百万台とやりますから、莫大なお金が必要になるわけです。さらに、市場価格も高くなるでしょう。買い手が減ります。同社は、価格を保ったまま、品質を偽装するやり方を考えたわけです。


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業界1位の宿命


トヨタもかつては米国内で「リコール問題」を起こしています。その時、トヨタの世界新車販売台数は1位でした。今回のフォルクスワーゲンと状況が似ています。1位になると例外なく、連邦政府に睨まれます。

業界1位の座を守るためには、価格競争で勝ち続ける必要もあります。値段が高い車は売れない。しかし良い技術を開発して、それを搭載しようものなら、お金がかかる。このジレンマの中、フォルクスワーゲンは値段を上げずにディーゼル車を売ろうと画策したわけです。どんな理由があろうと、人を騙してはいけない。


西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年10月上旬号「フォルクスワーゲン」− 4