大統領選と人種差別


アメリカは移民の国です。そのはじまりは1600年代、イングランドのジェームズ1世による迫害を恐れたピューリタン(清教徒)たちが、メイフラワー号に乗ってアメリカ大陸を目指した時代にさかのぼります。初期入植者である彼ら白人はWASP(ワスプ)と呼ばれました。WASPはWhite Anglo-Saxon Protestant(ホワイト・アングローサクソン・プロテスタント)の略称です。彼らの血を引く白人たちが、現在のアメリカ社会における中流・上流階級を占めています。

20世紀になると、アメリカは新たな移民の波に直面します。日本を含め、世界各国・地域から非常に多くの、多種多様な背景を持った人々がアメリカにやってきました。

アメリカで今起きている移民騒動の背景には、建国以来の歴史が大きく影響していることは間違いありません。人種や宗教に対する差別は想像以上に根深く、それはまた大統領選にも影響を与えてきました。


オバマ大統領の登場


2009年1月に誕生したオバマ大統領は、米国史上初となる黒人の大統領となりました。建国以来、米国の大統領は全て白人の男性です。女性はおろか、アフリカ系からも、アジア系、ヒスパニック系からも、誰一人いませんでした。ネイティブ・アメリカンの大統領などももちろんいません。大統領職は白人男性に独占されてきたのです。

そんな中でのオバマ大統領の就任には、米国だけでなく、世界中が仰天しました。「アメリカでは黒人差別が終わった」と誰もが考えた。これは偉大な歴史的出来事です。

アメリカ生活50年に及ぶ私が目撃したのは、オバマに投票した大勢の白人たちです。50年間で、こんな光景は初めてです。白人が黒人の候補者に賛同するなど、見たことも聞いたこともない。アメリカの白人たちにとってオバマ大統領の誕生は、いわば「禊」のようなものだったと思う。ドロドロとした差別意識と決別した瞬間のようでした。


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期待から、失望へ


ところが、オバマ大統領への期待は失望へと変わっていきます。白人が期待していたような政策はほとんど打ち出されることはありませんでした。黒人からも不満の声が上がっています。

今年(2016年2月現在)の11月で任期は丸8年になりますが、オバマ大統領はすでにニュースにもなっていない。選挙戦を控えたこの時期でも、彼の名は聞こえてきません。初代黒人大統領への失望が渦巻いています。弱腰外交、貧富の差の拡大、中産階級の空洞化など、様々な問題が噴出している状態です。

その一方でオバマ大統領は、朝から晩までゴルフしたり、大統領専用機でハワイ休暇を楽しんだりしているわけです。ゴルフには170億円、ハワイには70億ほど使った。就任時に比べ、今のオバマ大統領は空気の読めない、全くの別人になりました。



西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年2月上旬号「大統領選挙と人種差別」−1