精神は空白だ

マッカーサーは、日本人の魂の空白状態を埋める宗教を用意して、日本に上陸した。

「キリスト教は、それ自身の中に戦争を嫌悪する精神をもっている」とマッカーサーは信じていたので、キリスト教の伝道により、日本の「敗戦世代を治めるだけでなく、次の世代に対しても完全な精神改革を引き起こすこと」を試みた。

この精神改革が、日本人を「封建的な隷属から自由へ、神話教育や古臭い宗教儀式の幼稚さから真の知識と真実の成熟へと導き、また、戦争は避けられないとする盲目的な運命論から平和は達成できるとする現実的な考えへと解放する」と言った。

マッカーサーは、彼の日本占領がなぜ世界史上最も素晴らしいのかを誇らしげに、「日本から闘う意思と能力を抹殺するためにとった厳しい政策を別にすれば、連合国の政策は報復に基づくものではなく、キリストが人間愛を説いた〈山上の垂訓(すいくん)〉に示された不滅の愛に頼ったものである」と説明した。

それ故、「世界一の大実験室」を「神話教育によって成長を妨げられてきた民族に、キリスト教の理想を実際に見せることで、新たな文明と真理の高揚とを齎す絶好の機会だ」と見た。

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キリスト教を押し込め

マッカーサーにとって、キリスト教は、「アメリカの家庭の最も高度な教養と徳を反映するもの」であった。

彼は「アメリカ」と「キリスト教」を同一視し、この「素晴らしい精神性」、即ち「キリスト教」を極東アジアに広めることがアメリカの義務と考え、「極東においてはまだ弱いキリスト教を強化することができれば、今、戦争運命論の餌食になっている何億という文明の遅れた人々が、人間の尊厳、人生の目的という新しい考えを身に付け、戦争の魔性に抵抗できる精神力を持つようになるであろう」と宣言する。

日本人の間にキリスト教を伝道するために、マッカーサー自身「ある種の神学者にならなければならなかった」と告白し、「できるだけ大勢の宣教師が日本へ来てくれるように努力した」「機会さえあれば、私は来日して来た牧師たちに日本で働く必要があると言った。〈宣教師が沢山来てくれたら、それだけ多くのアメリカ兵が国へ帰れるのだ〉と。ポケット聖書連盟は私の要請に応えて、日本語訳の聖書1000万冊を配ってくれた。それで、日本の精神的再生が徐々に進んだ」と回想した。

GHQの教育顧問は、「マッカーサーの名は殆ど神のような祈りの言葉となり、アメリカは正しく〈神の国〉と呼ばれるに相応しくなった。他の連合国は存在しないのと同様である」とまで言った。

アチソン政治顧問はマーシャル国務長官に、「益々多くの日本人が、黄金律『己の欲するところを人に施せ』を戒律とするキリスト教に改宗しています」と報告した。

東京にいた占領当局者たちは、自分たちをキリスト教徒の十字軍戦士と信じ、日本を聖戦の場と見たのだろう。

日本で宗教改革を起こすつもりだったのだ。