軍政部の懸念


第8軍の懸念が現実になった例もある。大阪軍政部は、大阪府で僅か10人しか立候補しないのを見て、慌てた。その候補者の中には、

「〝賄賂〟を目当てにしている有名な闇市のボスが一人いる。共産主義者は三人、そのうち二人は歴とした共産党員である。一人は、不満たらたらの教科書出版業者で、教科書販売で十分な利益の分け前に与っていないと感じている男だ。あと残り全員は日教組の組合員である」。

この事態に眉を顰めた大阪軍政部は、彼等が望ましいと思う人物に立候補を勧めたが、「こんな立候補者相手に選挙を戦うのはいやだ」「選挙資金も支持者もない」「ボス連中や日教組の代表たちが結局は当選するのが目に見えている」と断った。

第8軍が選挙前の立候補資格審査を廃止しろと要請したにも拘らず、大阪からの報告は、全立候補者の資格審査を正当化してしまった。


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1948年9月17日、文部省はCIEに報告する。「立候補者1530人の資格審査をし、不合格だったのは僅か8人」

教師は資格審査の対象から外された。教師たちは、既に篩にかけられていたからである。


民主主義に付き纏う危険


CIEは、第8軍本部の強い要請と大阪軍政部の報告を深刻に受け止め、政策調整のため、オア教育部長(ルーミスの前任者)が民政局代表(ケイディスとジャスティン・ウィリアムズ)に会った。

ケイディスは、「マッカーサー憲法」草案を書いた1人である。

ケイディスはオアに、

「ホイットニー民政局長は、10月5日の選挙を延期すれば、マッカーサー元帥が日本国民を全く信用していないと受け止められるので、元帥の立場が非常に悪くなると考えている」

「日本国民が日教組組合員や共産党員を教育委員に選んでも、それは、民主主義に付き纒う当然の危険である」

と言った。

日教組が日本の教育を牛耳る危険はないと見ていたのだ。「民政局の担当官たちは、どんな結果になろうとも、我々CIEと共にその責任を分かち合う覚悟だ(勝ち敗け関係なく)」と、オアはニュージェント局長に報告した。