対中包囲網


TPPを国際関係の視点から見てみますと、TPPのメンバーに中国が入っていないことに気づきます。では、中国は何をしているのかというと、TPPに対抗するかのように「アジアインフラ投資銀行」の設立を目指しています。2015年11月現在は、すでに設立の準備が整い、あとは開業式典を待つのみといった状況です。この銀行には、イギリスやフランス、ドイツなどの主要国を含め、世界51か国が参加を表明しています。


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当然のことながら、アメリカと日本は参加していません。日本はアジアを代表する一国であり、様々な国際組織に加入しています。それなのになぜ日本はアジアインフラ投資銀行に賛同していないのでしょうか。

大きな理由の一つはアメリカからの圧力です。「安倍さん、入るなよ」って言われた。二つ目の理由は、お金の使い道について決裁権がないことです。例えば1億円投資したとして、どう使うかの決定権は中国のお偉いさんが握っているわけです。中国で仮に利益を上げたとしても、その利益を自国に持って帰ることができないのも、理由の一つとして挙げられます。あの有名なトランプ氏もこれに激怒しているのではないでしょうか。


ヨーロッパはどう考えているか


イギリスやフランス、ドイツはTPPに入っていません。ヨーロッパ諸国でなんとか経済を回しているのはドイツだけです。フランスもイギリスも経済が崩壊しかかっている。イギリスには、もう何も産業が残っていない。それほどの国になってしまった。

そんなとき、中国からアジアインフラ投資銀行設立の話が舞い込んできたわけです。ヨーロッパ諸国にとって中国はまさに「希望の星」でしょう。中国の申し出を喜んで受け入れた。アメリカは激怒です。イギリスに対しては「裏切行為だ」と非難しています。

中国はアメリカにお構いなしです。ベニスと北京をつなぐ21世紀版「シルクロード」を構想している。イギリスやフランス、ドイツはこのアイディアに飛び付くでしょう。シルクロードで挽回できるぞ、と考えているのでしょう。

しかし現実の世界はそう甘くない。中国は二回のアヘン戦争でイギリスやヨーロッパ諸国に復讐を誓っております。手の内に入ってきた途端、返り討ちするつもりではないか。


続く試練


ヨーロッパはまた新たな問題に直面しています。それはシリアの難民問題です。2015年現在の推計では、2016年の一年間で600万人がヨーロッパに流入すると言われています。そんな数の難民が入ってきたら、ヨーロッパは潰れます。

イギリスやフランス、ドイツはTPPどころではない。自分たちの財産を守ることに一生懸命になるでしょう。難民と言っても、困難を乗り越えて移動することができるのは若いお兄ちゃんたちです。自分たちの娘が難民と結婚し、子供を産むことについても、多くのヨーロッパ諸国で拒否反応が出るでしょう。

経済が低迷する一方、自分たちの血も、財産も、社会も守らなければならないという状況にあるヨーロッパは、これからどこに向かおうとしているのか。ヨーロッパは今、重要な岐路に立たされています。



西鋭夫のフーヴァーレポート

2015年11月上旬号「TPPと世界経済」− 4