blog196.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より

マッカーサー元帥は、キリスト教が普及するからこそ、民主主義が日本に根付くという強い信念があった。

マッカーサーがキリスト教に傾倒していたことは、演説の節々に現れる。たとえば、1947年9月2日の「降伏2周年目の演説」では、日本の古い考えを一掃して、新たに啓蒙と真実の精神を高揚させるために、「深淵で普遍的な価値であるキリスト教の理想を建設する機会である」と訴えた。

マッカーサーの熱烈なキリスト教化の熱意は、占領下日本の学校教科書にも影響を及ぼした。

西洋の歴史


マッカーサーは日本の学校教科書に敏感だった。

1947年後半、GHQ民間情報教育局(CIE)の承認を受けて、文部省がキリスト教を勉強するための教科書『西洋の歴史』(History of the West)を作成した。

しかし、この教科書がクリスチャンの逆鱗に触れる。キリスト教を説明する文章に、「福音書に書いてあるイエス・キリストの誕生、イエス・キリストの奇跡、イエス・キリストの復活をすべて信じることはできない」という、反キリスト教的な解説があった。

この事実を上智大学の神父ヨゼフ・ロゲンドルフ(Josef Roggendorf)が気づき、CIEに報告して異議を唱えた。

カトリック新聞


ロゲンドルフ神父は、『カトリック新聞』の紙面でもこの問題を取り上げる。

「西洋史とは名のみ」で、イエス・キリストの生涯を愚弄して福音書の記述に疑念を抱かせ、「生徒の脳裡に滲みこませよう」とする「寒心すべき有様」だと非難した。

ロゲンドルフ神父は続けて、『西洋の歴史』は、「キリスト教が今なお生きていることを信じているの人々には目もくれず」に、「二千年の長きにわたるキリスト教史を無視している」

「教会が生んだ聖賢も、哲学も、社会学も慈善団体のことも、今日の社会に於ける我らの地位もてんで顧みない」「カトリック教は何と『旧教』になつてしまつているではないか」と憤激して、「キリスト教に干渉することだけは是非やめてもらいたい」と抗議の狼煙を上げた。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
・Supreme Commander for the Allied Powers (SCAP). 1949. Political Reorientation of Japan, September 1945 to September 1948. Vol.2. Washington DC: U.S. Government Printing Office.
・"Anti-Christina History Text Approved in Japan," n.d., Joseph C. Trainor Papers, Hoover Institution Archives, CA, USA, Box 47.
・「寒心すべき西洋史敎科書」『カトリック新聞』第1052号、1947年12月21日。
・片上宗二『日本社会科成立史研究』(風間書房 、1993年)