blog198.jpgFrom: 岡崎 匡史
研究室より

教科書論争『西洋の歴史』②の続きです。

『西洋の歴史』が契機となり、キリスト教教科書のあり方について討議する会議まで開かれた。


出席者はカトリックから従軍牧師のポール・J・ギーゲリック。プロテスタントからは同じく従軍牧師のウィリアム・C・シュレー。GHQからは民間情報教育局ウィリアム・K・バンス宗教課長であった。

教科書検閲


日本側から言えば「検閲」、GHQ側から言えば「教科書検定」は、一人のメンバーがキリスト教について侮辱的な内容であると感じたら、内容を削除。また、明らかな侮辱や年齢に応じて不十分な内容であったら、同様に削除すると取り決めた。

『西洋の歴史』について、翻訳の問題がある可能性を認めつつ、10カ所以上の訂正や削除を指摘した。

たとえば、「キリスト教の起源が全く不十分だ」「十字軍運動の目的が不十分だ」「ザビエルの日本での活動を書き足すべきだ」という内容である。そして、教科書の執筆者は、『カトリック百科事典』『ブリタニカ百科事典』『キリスト教会の歴史』などを参照して書き直すべきだと勧告した。

ローマ字化推進者からの批判


この動きに思わぬところから批判が寄せられた。日本語のローマ字化推進を試みたロバート・K・ホール中尉からだ。

ホール中尉は、宣教師が日本の教科書に口をはさむことを疑問視している。

ホールによると、「当初の占領軍の方針では、従軍牧師は日本における宗教政策には関与してはならない」とされていた。それが今では、「聖職者会議において、宗教について日本人に何を教えるべきか決めようとしている。これは占領軍が日本政府に約束した、占領軍の全般の方針の基本である信教の自由に対する明白な違反」にあたる。

「宗教に関する事柄で日本側の歴史的解釈について制限をすることは、日本の国定教科書に占領軍が影響を与える基準を侵すものである」。CIEによるこのような施策は愚かなことで、「キリスト教宣教師の活動が占領軍の検閲を装っている」ことは、「米国の良心と政治的立場に真っ向から対立するものである」と痛烈に批判した。

ホールの視点からみても、GHQによる教科書介入は、「信教の自由」を踏みにじっているように見えた。


ー岡崎 匡史

PS. 以下の文献を参考にしました。
・"Board to Review References to Christianity Appearing in Proposed Japanese Public School Textbooks," 16 July 1948, Joseph C. Trainor Papers, Hoover Institution Archives, Stanford University, Box 47.
・"Chaplains to Scan Tokyo Textbooks," The New York Times, 7 February 1948.