米南部の惨状


実はアメリカでも学校教育が崩壊し始めています。それは貧困問題と密接に関係しています。


例えば、米国教育省のデータからは公立学校に通っている生徒の数が分かりますが、その数を詳しく見ると、ミシシッピ州やニューメキシコ州、ルイジアナ州、アーカンソー州など南部で多いことがわかります。アメリカ北部と比べると大違いです。単純な比較はもちろん出来ませんが、この数値の背景にはやはり貧困問題があるのです。

歴史的に見ても、アメリカ北部は産業地帯であり、住んでいる人々の多くは白人でした。一方の南部は、肉体労働を必要とするプランテーション農園が広がっており、多くの黒人たちが奴隷として働かされていました。南北戦争で南部は敗北しましたが、荒廃した大地を立て直すにも大きな差がでました。勝利した北部には、産業の中心地であったことも手伝って、多くの投資が集まり、復興が進みました。南部の復興は遅れました。


教育環境


南部は今、人口も非常に多い。アメリカの小中高校は、その土地の住民税でほとんどが賄われています。お金持ちの街には、潤沢な教育費があるわけです。貧しい街はその逆です。校舎はボロボロで、施設もほとんどない。コンピューターも一人一台持つのは夢の話です。

お金持ちの街の例として、スタンフォード大学があるパロアルト市を挙げることが出来ます。ここでは、子どもたち一人一人がコンピューターを持っています。学校にもたくさんのコンピューターが据え付けてあります。

ここは、日本で言えば高級住宅地で、住民税が非常に高いのですが、そこから教育費が捻出されるわけです。ですので、パロアルトの公立小中高校は全米でもトップクラスで優秀な学校になっています。わざわざ州を越えて、入学を目指す生徒たちもいるほどです。


公立学校の問題


お金のない街の公立学校は大変です。まず、子どもたちが学ぶ校舎がひどい。そこでは良い教育なぞできないでしょう。米国民はスポーツが大好きですが、スポーツ施設にも大きな違いが出ます。そもそも貧しい学校には、施設自体がありません。

先生の給料も違います。いろいろな補助もありますが、南部の貧しい州の公立校の給料は低い。その地域の生徒さんたちも熱心に勉強しないので、教える側の質もほとんど問われることがありません。

その土地自体が貧しい故に仕事もなく、子どもたちは家にこもったり、外で違法の商売に手を出したりすることが増えます。治安が乱れ、健全な地域が育ちにくくなります。投資も減り、そこで起業しようとする人もいなくなるでしょう。こうして、この地域はさらに貧しくなっていきます。


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西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年1月上旬号「アメリカの貧困」− 3