終身雇用


日本ではこれまで、一度就職したら定年まで雇用される終身雇用制が一般的でした。しかし今では様々な雇用形態があります。

私がアメリカに行ったのは1964年で、もう50年前となりますが、この時はアメリカでも終身雇用が一般的でした。当時のアメリカはゴールデンエイジ(黄金時代)などと呼ばれ、米国内の産業もしっかりしており、経済成長を謳歌していました。周りの友人たちを見ていると、大学卒業後は一つの会社に勤めて、ほとんどがその会社で退職まで働きました。

良く知られているのはフォード(Ford)とコダック(Kodak)です。コダックは有名広告代理店ですね。コダックに就職した人たちは、そこで職場結婚して、息子と娘ができたら、この2人もコダックで働き、孫もコダックで働く。そうした暗黙のルートが出来ていたように思います。フォードも同じでした。ここからフォード・ファミリー、コダック・ファミリーといった大金持ちが生まれてきます。他にもたくさんの例がありますが、とにかくアメリカ人全体が中産階級になったように悠々と生活しておりました。


人材の引き抜き合戦


ところがベトナム戦争も終盤を迎える頃になると、米国社会にも変化が訪れた。例えば、優秀な学生が大学卒業後にフォードに入社すると、2、3年後にはメルセデスベンツから声がかかるわけです。給料を倍にするとか、自動車をあげるとか、言い寄るわけですね。家のローンを払ってあげる、というのもあったようです。

人材の引き抜き合戦の中で、声がかかった人たちは涼しい顔をして転職します。転職した先でも、優秀な人材だとわかれば、またすぐに転職の機会が訪れます。転職出来るか否かが、人の能力を測る基準になってしまったのです。転職しない人には、「出来ない人」とのレッテルが貼られた。米国はそんな社会になってしまいました。

引き抜き合戦は年々ますます加熱化している状況で、例えばスタンフォード卒だとアップルやグーグル、マイクロソフトなどが競争しています。


コネ社会


米国社会の就職事情という点で、もう一つ大切なことがあります。それは、日本でいう「コネ」です。アメリカ社会におけるコネ作りはFacebookやLinkedInなどが有名です。皆さん、デジタル社会の中で創意工夫しながら、自己宣伝をしている。そうすると、どこぞの会社の人事関係者が見て、引き抜きするわけです。


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頭があればいくらでも挑戦できる。しかもそんなにお金はかからない。私は個人的に、この方式はとても良いことだと思います。若かったら、私も絶対やっていると思います。


西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年1月上旬号「アメリカの貧困」− 6