日本遺産


日本人は、日本各地の様々な遺跡などが世界遺産に登録されることがお好きなようで、新たな候補地がリストに上がる度に一喜一憂しているような状況です。しかし、日本にはまた、文化庁が認定する日本遺産というものもがあります。

先日、文化庁は今年(2016年)の日本遺産を発表しました。その中に和歌山県が申請した「鯨とともに生きる」捕鯨文化が日本遺産に認定されました。この日本遺産には、2009年に話題になった映画、The Cove(ザ・コーヴ)の舞台となった和歌山県の太地町も含まれております。The Coveは捕鯨問題を世界的に知らしめた映画で、日本の鯨漁が批判の対象となりました。これに対して、2015年にはBehind "THE COVE"(ビハインド・ザ・コーヴ)という、The Coveの間違いや舞台裏を鋭く指摘しながら、日本側の捉え方と価値観を描く映画も制作されました。

今回の日本遺産の登録によって、捕鯨に関する世界的な議論が再燃するかもしれません。


捕鯨文化


日本人と鯨の歴史は非常に長い。おそらく数千年の単位でしょう。日本列島の近海に、たくさんの鯨がおりました。昔ながらの鯨狩りは、手漕ぎの船で行いました。10人ぐらいの屈強な男が漕いで鯨を追いかけ、銛(もり)打ちが銛をバッと投げて鯨の動きを止めます。そして、鯨を浜辺へと引き上げていくわけです。

日本人は鯨を生活の全てに取り入れてきました。食としては、貴重なタンパク源として、他には油も、鯨の髭も、すべて暮らしの中に生かしてきました。日本人にとっての鯨は、海からの贈り物、海の神様からの贈り物でした。


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お鯨さま


生活に根ざした鯨の姿は、当時の記録や構造物の中でもしっかりと描かれています。土佐の浜辺で捕鯨をする人々を描いた素晴らしい絵もあります。

神格化された鯨は、恵比寿(えびす)様として崇められ、描かれておりました。像もたくさんありますし、多くの場合は潮を吹いておられますが、どれも愛情たっぷりな様子です。それほど親しまれた鯨です。

そんなお鯨さまと捕鯨を大切な文化としてきた日本が、The Coveをきっかけとして、世界中から大きな批判を浴びた。そこで文化庁も黙っていまいと必死になり、日本遺産への登録を急いだのでしょう。




西鋭夫のフーヴァーレポート

2016年5月上旬号「捕鯨外交」-1